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柳川市は、人口は約6.4万人で県内14番目に多く、面積は約77.15km²で県内で16番目の広さです。福岡県の南西部、九州最大の河川である筑後川と矢部川によって形成された筑後平野の最南西端に位置しています。その地理的な最大の特徴は、市内に縦横に張り巡らされた「掘割（ほりわり）」と、日本一の干満差を誇る有明海に面している点です。

地形と水環境の特性

• 筑後平野の低平地:

  • 柳川市は、両河川が運んだ土砂でできた沖積平野に位置し、標高が0mから5.6mほどの平坦な低平地です。このため、古くから水害に悩まされてきた地域です。

• 掘割（クリーク）のネットワーク:

  • 水害対策と生活用水の確保のため、古来より湿地帯の土地を掘り、掘り上げた土を盛ることで集落や農地をつくり、水路を整備してきました。

  • これが発展し、現在では柳川市の中心部に約60km、市域全体では約930kmもの掘割（水路）が縦横に張り巡らされた独特の景観を作り出しています。この掘割は、治水・利水・舟運の役割を担ってきました。

• 有明海に面する:

  • 市の南部は有明海に面しています。有明海は日本一の干満差（最大6～7m）がある湾奥部に位置しており、干潮時には広大な干潟が出現します。この干満差の影響で、塩害や真水を得にくいという地理的な制約もありました。

周辺との関係

• 交通の要衝:

  • JR鹿児島本線や西鉄天神大牟田線、有明海沿岸道路などが通り、福岡市方面や隣接する大牟田市などへのアクセス拠点となっています。

柳川市は、この低平地という地理的制約を逆手に取り、独自の「水郷（すいごう）」文化を築き上げた地域として知られています。

柳川市は、水郷という特殊な地理的条件を克服し、江戸時代を通じて城下町として栄えた歴史を持ちます。

近世：城下町と掘割の整備

柳川市の歴史は、戦国時代末期から江戸時代初期にかけての城下町づくりが核となっています。

• 立花宗茂の初代統治:

  • 豊臣秀吉の家臣であった立花宗茂（たちばな むねしげ）は、文禄・慶長の役で功績を上げ、豊臣政権下で筑後柳川13万2千石を与えられ、柳川藩の初代藩主となりました。しかし、関ヶ原の戦い（1600年）で西軍についたため改易されます。

• 田中吉政による都市基盤の確立:

  • 宗茂の後に柳川に入ったのが田中吉政（たなか よしまさ）です。吉政は、低湿地帯で水害に悩まされていた柳川の地に対し、大規模な治水事業に着手しました。

  • 現在、柳川の景観を特徴づけている掘割（ほりわり/クリーク）の多くは、この吉政の時代に整備されました。掘割は、治水・利水・舟運だけでなく、城の防御の役割も担う、現在の柳川の礎となる都市構造を確立しました。

• 立花宗茂の再封と幕末:

  • 田中家は2代で後嗣断絶により改易となり、1620年（元和6年）に立花宗茂が徳川幕府によって柳川10万9千石余の大名として再封されました。

  • 以後、宗茂を祖とする立花家が幕末まで代々柳川藩主を務め、柳川城は藩政の中心として機能しました。

古代・中世

• 干拓と水利:

  • 柳川の地は、もともと筑後川と矢部川が運んだ土砂が堆積してできた低湿地であり、有明海の干満差の大きい湾奥部に位置していました。

  • 弥生時代から、人々は干潟を掘り割って排水し、その泥土を盛り上げて住居を守るという、干拓と治水の歴史を繰り返してきました。この初期の掘割が、後に近世の城下町を支える大規模な水路網へと発展しました。

現代

• 明治維新後の廃藩置県を経て、1952年（昭和27年）に市制を施行し、柳川市が誕生しました。

• 現在は、掘割を巡る「川下り」が有名な観光地となり、歴史的な景観や文化が大切に守り継がれています。

柳川市は、市内を縦横に流れる掘割（ほりわり）を巡る「川下り」が最大の観光資源であり、それと並んで、発祥の地とされる郷土料理「うなぎのせいろ蒸し」が食文化の代名詞となっています。

食文化（グルメ）

柳川の食文化は、筑後川水系の豊かな水と、日本一の干満差を持つ有明海の恵みに支えられています。

• うなぎのせいろ蒸し:

  • 柳川を代表する、発祥の地とされる郷土料理です。

  • タレを絡めたご飯の上に、蒲焼きにしたうなぎと錦糸卵を乗せ、せいろで蒸し上げます。

  • 蒸すことで、最後まで熱々で、うなぎの旨味がご飯にしっかり染み込んだ贅沢な味わいが特徴です。

  • 市内には江戸時代から続く老舗を含め、約30軒のうなぎ料理店が点在し、各店が秘伝のタレと独自の調理法を守り続けています。

• 有明海の珍味:

  • 干潟が広がる有明海ならではの珍しい魚介類が食されます。

  • 代表的なものに、ムツゴロウ（蒲焼きや甘露煮）、ワラスボ（干物や刺身）、クチゾコ（煮付け）などがあり、独特の風味や食感が楽しめます。

• 柳川鍋:

  • 甘辛いだし汁で、ささがきにしたゴボウとドジョウを煮込み、卵でとじた素朴な郷土料理です。うなぎに劣らない滋養があるとされ、昔から親しまれてきました。

 観光スポット

柳川の観光は、水路を巡る体験と、歴史的な城下町の散策が中心です。

1. 水郷柳川の象徴

• 川下り（掘割めぐり）:

  • 柳川観光の代名詞です。掘割を、船頭さんの歌や語りを聞きながら「どんこ舟」でゆったりと巡ります。

  • 水路沿いには、しだれ柳の緑、赤煉瓦の並倉、白なまこ壁の旧家などが映え、四季折々の水郷情緒が楽しめます。

  • 所要時間は約1時間～1時間10分で、終着点近くには、名物のうなぎ店が多く連なっています。

2. 歴史・文化施設

• 柳川藩主立花邸 御花:

  • 江戸時代から続く旧柳川藩主立花家の邸宅です。

  • 国の名勝に指定されている美しい庭園「松濤園（しょうとうえん）」や、迎賓館として建てられた洋館「西洋館」などがあり、柳川藩の歴史と格式を今に伝えています。

• 北原白秋生家・記念館:

  • 柳川が生んだ近代文学の巨匠、北原白秋の生家と記念館があります。白秋の詩歌の世界や、幼少期の暮らしが残る歴史的な建物を見学できます。

3. その他

• 柳川まり:

  • 江戸時代から伝わる伝統的な工芸品で、美しい幾何学模様が特徴の手まりです。お土産としても人気があります。

• 柳川ひまわり園:

  • 夏季限定で広大な畑にひまわりが咲き誇る景勝地です。

柳川市は、「水郷（すいごう）」として独特の風情を持つ地域であり、新鮮な食とゆったりとした暮らしを求める人にとっては暮らしやすい街です。ただし、車での移動が前提となる田園都市の側面もあります。

メリット

1. 食文化と物価の安さ:

   • 新鮮な食材: 有明海に面し、筑後平野の農業も盛んなため、野菜や海産物が豊富で、物価が安いと感じる住民が多いです。名物のうなぎのせいろ蒸しなど、独自の食文化が楽しめます。

   • 商業施設: 国道208号線沿いを中心に、スーパー、ショッピングモール（柳川ショッピングモールなど）、家電量販店、飲食店が揃っており、日常の買い物には困りません。

2. 交通アクセス（車と電車）:

   • 主要道路: 沿岸道路が近く、大牟田方面や佐賀方面への車でのアクセスが便利です。市内の主要道路も整備され、渋滞が少ないため、車での移動は快適です。

   • 西鉄柳川駅: 西鉄天神大牟田線の特急停車駅であり、福岡市（天神方面）へ比較的スムーズにアクセスできます。駅周辺は整備され、利用しやすいです。

3. 環境とコミュニティ:

   • 豊かな自然: 水郷の美しい景観や、自然が多く残る環境で、静かにのどかに過ごしたい人に向いています。

   • 近所付き合い: 比較的地域コミュニティがしっかりしており、「ご近所付き合いがあり、色々助けられる」という声や、子どもの見守り活動があるなど、人情味のある暮らしが可能です。

4.

• 子ども医療費助成制度:

  • 柳川市に住む子どもが医療機関で診療を受けた際の自己負担分を助成する制度が整備されています。（助成対象の年齢や自己負担額は自治体によって変動するため、最新情報は市役所にご確認ください。）

• 幼児教育・保育の無償化:

  • 3歳から5歳のすべての子どもの幼稚園、保育所、認定こども園などの利用料が無償化されています（所得制限なし）。

  • 0歳から2歳の子どもについても、住民税非課税世帯は利用料が無償化されます。

• 第3子以降の保育料無償化（市独自の上乗せ）:

  • 国制度に加え、柳川市では0歳から2歳の保育所や認定こども園（保育所コース）を利用している子どもについて、第3子以降の保育料を無償化する独自の支援を行っています。（※国の制度では兄姉の年齢や保護者の税額に制限がありますが、柳川市独自の支援では対象が拡大されます）。

• 多様な保育施設:

  • 保育所、認定こども園、幼稚園などが市内各地にあり、子どもの年齢や家庭の状況に合わせて選択できます。

• 一時預かり・延長保育:

  • 保護者の緊急時やリフレッシュ、または就労時間外に対応するための延長保育事業や一時保育事業を実施している施設があります。

• 「こども誰でも通園制度」（導入の動き）：

  • 国の新しい制度に基づき、保護者の就労状況に関わらず、0歳6ヶ月から満3歳未満の未就園児を保育所などに一定時間預けられる仕組みの導入が進められています（最新の実施状況は要確認）。

• 子育て世代包括支援センター:

  • 妊娠・出産から子育て期にわたるまでの切れ目ない相談支援を提供しています。保健師などが中心となり、育児相談や情報提供を行います。

• 地域子育て支援センター:

  • 各地域に設置されており、親子が自由に集い、交流できる場を提供しています。育児相談や講座なども実施し、子育て世帯の孤立化を防ぐ役割を担っています。

注意点

1. 交通手段の限定:

   • 車が必須: 中心部や駅周辺を除くと、バスなどの公共交通機関の本数が少なく、生活には車が必須となります。

   • 観光地からの距離: JRや西鉄の駅から、川下りの乗降場など主要な観光地までやや距離があるため、観光客にとっては不便に感じられることがあります。

2. 都市的な魅力の不足:

   • 商業的施設: 大規模な商業施設やチェーンのファミレスなどが少なく、若者にとっては物足りないと感じる場合があります。栄えているとは言い難いとの声もあります。

   • 子どもの遊び場: 高齢者の割合が多いこともあり、公園や児童館など、子どもを遊ばせる施設が少ないという不満点も指摘されています。

3. 水害リスク:

   • 柳川市は低平地であり、掘割が治水機能を担っていますが、大雨の際には水害のリスクが高い地域であることを認識しておく必要があります。

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