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人吉市は、人口約2.9万人で県内で11番目に多く、熊本県の南部に位置し、九州山地に囲まれた「人吉盆地（球磨盆地）」の西南端に位置しており、内陸性の気候と、市の中央部を流れる球磨川が地理的な最大の特徴です。

地形と位置

• 人吉盆地（球磨盆地）: 市域は四方を九州山地の連山に囲まれた盆地の中にあります。盆地は東西約30km、南北約15kmにわたって広がり、人吉市はその中心的な役割を担っています。

• 標高: 盆地の平均的な標高は比較的高く（市役所付近で約112メートル）、内陸部に位置します。

• 県境: 南は鹿児島県、東は宮崎県に接しており、肥後（熊本）・薩摩（鹿児島）・日向（宮崎）を結ぶ交通の要衝としても古くから重要でした。

河川と水資源

• 球磨川（くまがわ）: 市の中央部を、日本三急流の一つである球磨川が東西に貫流しています。

  • 球磨川は古くから水運や農業用水として地域の生活を支えてきた「母なる川」であり、現在では球磨川下りやラフティングなどの観光資源としても利用されています。

  • 南北から多くの支流が球磨川に注ぎ込んでいます。

 気候

• 内陸性気候: 九州山地に囲まれた盆地特有の内陸性気候に属しており、昼夜の寒暖差が激しいのが特徴です。

• 霧: 秋から春にかけて、盆地全体がすっぽりと霧に覆われることが多く、朝霧の発生頻度は日本でもトップクラスです。

• 降水量: 年間降水量は多く、豊富な雨水が大地を潤し、良質な水資源を生み出しています。

これらの地理的条件が、人吉盆地を米どころとし、球磨焼酎という世界的なブランドを生み出す基盤となっています。また、城下町として栄えた歴史と相まって、温泉が湧き出る観光地としても知られています。

人吉市は、相良（さがら）氏が約700年間にわたり治めた城下町としての歴史が最大の特徴です。日本三急流の球磨川の恵みと、山々に囲まれた内陸性の環境が独自の文化と歴史を育んできました。

古代～中世初期：人吉の起こり

• 旧石器・縄文時代: 人吉盆地には古くから人が住んでいた形跡があり、旧石器時代から各時代の遺跡が出土しています。

• 地名の起源: 平安時代中期の文献には「人吉」の地名が初めて現れ、日向・薩摩・肥後を結ぶ交通の要衝であり、「宿（舎）」があったことが語源とする説があります。

• 青井阿蘇神社の創建: 平安時代初期の806年に、現在の国宝 青井阿蘇神社が創建されたと伝えられており、古くからこの地の信仰の中心となってきました。

 中世・近世：相良氏700年の統治（鎌倉時代～明治維新）

• 相良氏の入国: 鎌倉時代初期（12世紀末～13世紀初頭）に、相良氏が鎌倉幕府の地頭として遠江国（現在の静岡県）から人吉に入国しました。

• 700年の支配: 相良氏は、戦乱や困難を経ながらも、明治維新までの約700年間にわたり、この地方（人吉・球磨地方）を大名として一貫して統治しました。この「相良700年」という長い統治の歴史は、全国でも類を見ないものです。

• 人吉城の完成: 戦国時代から本格的な築城が始まり、慶長年間（16世紀末～17世紀初頭）に近世の人吉城が完成しました。球磨川と胸川を天然の堀とした堅固な城で、別名「繊月城」とも呼ばれました。

• 城下町の発展: 相良氏の統治のもと、城下町が整備され、現在の人吉市街地の基盤が築かれました。

• 球磨焼酎の文化: 良質な米と水に恵まれた人吉盆地では、独自の米焼酎である球磨焼酎の文化が育まれ、400年以上の歴史を持つ地域ブランドとなりました。

• 社寺の建築: 江戸時代初期には、現在の国宝 青井阿蘇神社の社殿群（楼門、本殿など5棟）が建立され、桃山時代の華麗な装飾を伝える建築として、地域の文化財の象徴となっています。

現代：観光都市への発展と災害からの復興

• 市制施行: 1942年（昭和17年）に市制が施行され、人吉市が誕生しました。

• 観光都市: 相良氏の歴史遺産（人吉城跡など）、国宝 青井阿蘇神社、そして日本三急流の球磨川下り、人吉温泉などの豊富な観光資源を活かし、温泉観光地として発展しました。

• 日本遺産認定: 近隣町村とともに、相良氏700年の歴史と文化を物語るストーリーが日本遺産に認定されています。

• 令和2年7月豪雨災害: 2020年（令和2年）7月、球磨川の氾濫により市域は甚大な水害に見舞われ、国宝青井阿蘇神社を含む多くの歴史的建造物や観光施設、市街地が浸水被害を受けました。

• 復興への歩み: 現在、人吉市は歴史と文化を復興のシンボルとして、豪雨災害からの力強い復興を目指しています。

人吉市は、「相良700年の歴史」と「球磨川」の恵みによって育まれた独自の食文化と、歴史遺産、温泉、そして雄大な自然体験が魅力の観光都市です。

 食文化（グルメ・特産品）

人吉・球磨地方の食文化は、良質な米と豊富な水資源がベースとなっています。

• 球磨焼酎（くましょうちゅう）:

  • 米焼酎として世界ブランドに登録されており、500年以上の歴史を持つ伝統の酒です。

  • 人吉盆地の良質な米と、清流球磨川の伏流水を使って造られ、市内外に多くの蔵元があります。「球磨焼酎ミュージアム」などで試飲や歴史を学べます。

• うなぎ料理:

  • 球磨川の清流に育まれた川魚料理が有名で、特にうなぎは古くからこの地の名物として親しまれてきました。市内には老舗のうなぎ屋が点在しています。

• 川魚・山女魚（ヤマメ）:

  • 球磨川の恵みとして、鮎（アユ）の中でも特に大きな尺鮎や、山女魚などの川魚料理も特産です。

• 地域グルメ:

  • ラーメンや餃子なども地域に根ざしたグルメとして人気です。

• 栗製品:

  • 盆地の寒暖差を活かした山江村の球磨栗（天皇への献上栗としても有名）など、栗を使った和菓子や洋菓子も特産品です。

 観光スポット

人吉市の観光は、歴史・文化、自然、温泉の三つが柱です。

1. 歴史・文化遺産

• 国宝 青井阿蘇神社（あおいのあそじんじゃ）:

  • 約1,200年の歴史を持つ神社で、現在の社殿群（本殿、楼門など5棟）は江戸時代初期に建立されました。

  • 熊本県初の国宝に指定された茅葺き屋根と桃山様式の華麗な装飾が特徴です。

• 人吉城跡（ひとよしじょうあと）:

  • 鎌倉時代から明治維新までの約700年間、相良氏が居城とした城跡です。

  • 球磨川を天然の堀として利用した難攻不落の城で、日本百名城の一つに選ばれています。城跡全域が国の史跡であり、歴史館も併設されています（※豪雨災害により休館中の施設もあります）。

• 武家屋敷（鍛冶屋町など）:

  • 相良氏の城下町として栄えた名残で、当時の武家屋敷が残る通りなど、落ち着いた歴史的な街並みを散策できます。

2. 自然・体験観光

• 球磨川（くまがわ）:

  • 日本三急流の一つで、球磨川下り（舟下り）やラフティングといったダイナミックな川のアクティビティが楽しめます。

  • 川沿いの雄大な景色が魅力です。

3. 温泉

• 人吉温泉:

  • 約50ヶ所の温泉施設や旅館が点在しており、球磨川沿いにも多くの温泉宿があります。

  • 泉質は炭酸水素塩泉が主で、硫黄臭がなくアルカリ性で「美人の湯」とも呼ばれています。

人吉市は、豊かな自然環境と長い歴史・文化が魅力ですが、四方を山に囲まれた盆地という地理的特性から、交通面では不便さが伴います。また、2020年（令和2年）の球磨川豪雨災害からの復興過程にあることが、現在の暮らしやすさを考える上で重要な要素です。

暮らしやすさの主なメリット

1. 豊かな自然と温泉文化 

• 温泉が身近: 「美人の湯」として知られる人吉温泉があり、市民の日常生活に深く根付いています。多くの温泉施設や共同浴場があり、気軽に利用できます。

• 美しい自然: 日本三急流の球磨川や九州山地に囲まれ、四季折々の自然景観が楽しめます。内陸盆地特有の寒暖差は、米や焼酎の生産に適した環境です。

• 歴史と文化: 相良氏700年の歴史が息づく城下町で、国宝青井阿蘇神社をはじめとする歴史遺産や、情緒ある街並みが残っています。

2. 地域コミュニティ

• 内陸盆地の絆: 閉鎖的な地理的環境が、古くからの強固な地域コミュニティを育んできました。この絆は、特に豪雨災害からの復興において大きな力となっています。

3. 子育て・医療

• 子ども医療費助成制度

   

  人吉市は、子どもの医療費の自己負担分を助成する制度を拡充しています。

  • 対象年齢: 0歳から高校3年生相当まで（18歳到達後の最初の3月31日まで）の児童が対象です。

  • 助成内容: 令和5年7月診療分から、対象となる子どもの通院費および入院費の自己負担分（保険適用分）が無料になっています。

   

  2. 幼児教育・保育の無償化

   

  国の制度に基づき、幼稚園、保育所、認定こども園などの利用料の無償化を実施しています。

  • 3歳から5歳児: 保育料は無償です（ただし、延長保育料や給食費の一部などは保護者負担となります）。

  • 0歳から2歳児: 住民税非課税世帯の子どもが保育料無償化の対象です。

   

  3. 児童手当

   

  国の制度に基づき、中学校修了前の子どもを養育する方に手当を支給しています。

  • 支給額は子どもの年齢や出生順によって異なりますが、第3子以降の手当が手厚くなる仕組み（支給額増額）があります。

   

  4. 地域の子育てサポート

   

  • 子育て支援センター: 子育て中の親子が交流したり、育児相談ができる場を提供しています。

  人吉市は、地域的な特性に加え、高校生世代まで医療費が無料になるなど、経済的な支援も充実させています。

考慮すべき課題点

1. 交通の不便さ 

• 内陸の交通: 周囲を山に囲まれているため、熊本市中心部や他の都市圏へのアクセスに時間がかかります（車で約1時間半〜2時間）。

• 公共交通: 鉄道（JR・くま川鉄道）やバスはありますが、本数が限られており、日常生活には自家用車が必須です。

2. 災害からの復興（球磨川豪雨）

• 水害リスク: 2020年の豪雨災害により、球磨川沿いの地域は甚大な被害を受けました。治水対策は進められていますが、再度の水害リスクは常に意識する必要があります。

• 復旧・再建: 豪雨で被災した住宅の再建はほぼ完了に近づくなど、物理的な復旧は進んでいますが、地域のインフラや観光・商業施設の完全な復興には引き続き時間を要しています。

【総合評価】 人吉市は、歴史と自然、温泉文化の中で静かに暮らしたい人にとっては魅力的な場所です。しかし、生活の利便性（特に都市部へのアクセス）は低く、豪雨災害からの復興状況や将来の治水対策を考慮に入れる必要があります。地域の強いコミュニティに溶け込み、自然災害への備えを持ちつつ生活できる方に向いています。

人吉市の事をより詳しく知りたい方こちらを↓

人吉市の公式ホームページのURLは、https://www.city.hitoyoshi.lg.jp/ です。

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